105量子ビットと1300万量子ビットの差|移行の選択権は誰にある
「量子コンピュータがビットコインを破る」という話を聞いて、今すぐ何か手を打たなければと焦った経験はないでしょうか。あるいは逆に、「どうせ何十年も先の話だろう」と聞き流してきたでしょうか。どちらの反応も、少し的が外れています。
今問うべきは「量子コンピュータがいつ脅威になるか」ではなく、「脅威が現実になったとき、誰があなたのBTCを動かすのか」です。
現在地を数字で確かめる
2024年末にGoogleが発表した最新の量子チップ「Willow」は105量子ビットです。一方、研究者の推定によれば、ビットコインが署名アルゴリズムとして使っているECDSAを1日以内に解読するには、約1300万量子ビットが必要とされています。
差は約12万倍。
この数字を見れば、今すぐ脅威ではないことがわかります。現在の量子コンピュータでビットコインの秘密鍵を解読しようとすれば、宇宙の年齢をはるかに超える時間がかかる計算になります。パニックになる必要はありません。
ただし、「今は大丈夫」という事実は、「将来も大丈夫」を意味しません。量子コンピュータの性能向上は指数関数的に進む可能性があり、10年後・20年後の話は誰にも断言できないのです。
プロトコルは動ける。問題はあなたのBTC
ビットコインのプロトコル自体は、量子耐性署名への移行を技術的に実現できます。NIST(米国標準技術研究所)はすでに量子耐性暗号の標準化を進めており、ビットコイン開発者コミュニティも対応策の議論を続けています。ネットワーク全体として動く準備は、時間をかけながら整えていくことができます。
しかしここで立ち止まって考えてほしいのは、「あなた個人のBTC」の話です。
ビットコインのアドレスを量子耐性のある新しい形式に移行するには、現在のアドレスから新しいアドレスへ実際に送金する必要があります。そして送金にはトランザクションへの署名が必要で、署名するには秘密鍵が手元になければなりません。
秘密鍵を自分で管理していなければ、この作業はできません。
取引所に預けたままでは選択権がない
取引所にBTCを預けている場合、秘密鍵を管理しているのは取引所です。量子耐性アドレスへの移行を「いつ・どのように行うか」を決めるのも取引所になります。
これは現在の法制度の問題ではありません。日本の資金決済法のもと、取引所は顧客資産を分別管理する義務を負っており、法律上の所有権はあなたにあります。問題は所有権ではなく、管理権とアクセス権の話です。
量子脅威が現実化した際に「量子耐性への移行が必要だ」と判断したとき、取引所が対応を完了するまであなたは待つしかありません。取引所がシステム移行を優先する順序、対応スピード、あるいは技術的トラブルによる遅延——これらの判断があなたの手を離れているという事実が、リスクの本質です。
過去を振り返れば、取引所の対応遅延がユーザーに不利益をもたらした事例は珍しくありません。今は仮定の話であっても、「動かしたいときに動かせない」という状況がどれほどのストレスを生むか、想像に難くないはずです。
秘密鍵を持つことの意味
ハードウォレットで秘密鍵を自己管理している場合、量子耐性アドレスへの移行はあなた自身が主体的に行えます。タイミングを決めるのはあなたです。早期対応するもよし、コミュニティ全体の移行方針が固まってから動くもよし——いずれにせよ、判断と実行の権限があなた自身にあります。
量子コンピュータの脅威は、今この瞬間の問題ではありません。しかし、脅威が高まったときに対処できる立場にいるかどうかは、今の選択によって決まります。12万倍の差がどの程度の速度で縮まるかは予測できませんが、秘密鍵を自分の手元に置くかどうかは、今日決められることです。
まだハードウォレットを持っていないなら、まず一歩だけ踏み出してみてください。公式サイトから購入し、初期設定を完了させるだけでいい。その一歩が、将来の選択権を手元に残すことになります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
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