ライトニングネットワークが使えない本当の理由

あなたのビットコインで、今すぐライトニング決済ができますか?そう問われたとき、「取引所のアプリで送金できるから大丈夫」と答えた人は、少し立ち止まってほしい。

ビットコインのブロックチェーンが1秒間に処理できるトランザクションは、約7件だ。VISAの最大2万4,000件と比べると、その差は3,000倍以上になる。デジタルゴールドとしての価値保存には問題ないが、世界中の人が日常的に使う決済インフラとして考えると、これは深刻な制約だった。

毎秒7件という天井

ビットコインのブロックは約10分に1度生成され、1ブロックに収容できるデータ量には上限がある。設計当初はこれで十分と考えられていたが、利用者が増えるにつれて問題が顕在化した。ブロック内に入りきらないトランザクションは「メモリプール」に積み上がり、手数料を多く払ったものが優先して処理される。急いでいるときほど高い手数料を払わざるを得ない状況が生まれた。

この「毎秒7件の壁」は、ビットコインを日常決済に使おうとする人々にとって、避けて通れない課題だった。

2015年に生まれた解答

2015年、二人の研究者がこの問題に対する解答を発表した。Joseph PoonとThaddeus Dryjaが書いたホワイトペーパー「The Bitcoin Lightning Network」だ。

その発想は大胆だった。すべての取引をブロックチェーンに記録するのをやめる。二者間で「チャネル」と呼ばれる決済経路を開設し、その中で何度でも取引を重ねる。ブロックチェーンに書き込むのは、チャネルを開いたときと閉じたときの2回だけ。途中の取引はオフチェーンで処理されるため、確認は瞬時で手数料はほぼゼロになる。

このライトニングネットワーク(LN)は、ビットコインの分散性と安全性を損なうことなく、理論上は毎秒数百万件の決済を処理できる。2018年にメインネットで稼働が始まり、現在は世界中でビットコインの高速決済インフラとして使われている。

LNを使うには秘密鍵が必要

しかし、LNには一つの前提条件がある。チャネルを開設するとき、ビットコインをロックするために秘密鍵による署名が必要になる。これはLNの設計上、省略できない要件だ。

取引所にビットコインを預けている場合、秘密鍵はあなたではなく取引所が管理している。つまり、秘密鍵なしにLNチャネルを自分で開設することはできない。

取引所のなかにはLN対応サービスを提供しているところもある。しかしそれは、取引所のインフラを経由した間接的なLNだ。チャネルの開設・管理・閉鎖はすべて取引所が行い、あなたはその結果を画面で見るだけになる。ビットコインの技術革命の恩恵を受けているのは、取引所であってあなたではない。

取引所保管が生む根本的なリスク

LNの問題だけにとどまらない。取引所に秘密鍵を預けることは、もっと根本的なリスクを抱えることになる。

取引所に何かあったとき——経営破綻、システム障害、法的な資産凍結——あなたはビットコインを引き出せなくなるリスクがある。過去には複数の取引所でこうした事態が起きている。日本では分別管理義務が法律で定められているが、それはあくまで法的な保護であり、実際に引き出せるかどうかはまた別の問題だ。

秘密鍵を持たないということは、アクセスの主導権を取引所に委ねているということだ。取引所が正常に動いている間は問題ない。しかし、何かが起きたときに初めて、その意味に気づくことになる。

ビットコインを「使う」ための準備

LNを自分で使うための第一歩は、セルフカストディだ。ハードウェアウォレットを用意し、シードフレーズを安全な場所に保管する。その上でLN対応ウォレット(MuunやPhoenixなど)を使えば、自分の秘密鍵でLN決済を体験できるようになる。

ビットコインの価値を信じて保有してきたなら、その資産が持つ技術的な可能性にも、自分でアクセスできるようにしておく価値がある。LNはその一例に過ぎない。今後も新しい技術がビットコインに積み重なるたびに、秘密鍵を持っているかどうかで、できることとできないことの差は広がっていく。

あなたのビットコインが「ただ眺めるだけの数字」で終わらないために、今日一度、保管方法を見直してみてほしい。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

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