サトシが消えたからBTCは変わらない|ETH移行が証明した創設者リスク
あなたは「ビットコインは絶対に変わらない」と思っているでしょうか。2100万枚の上限も、プルーフ・オブ・ワークも、永遠に続くと。
それは正しい。しかし、その不変性の恩恵を本当に受けられているかどうかは、また別の問題です。
ETHは2022年、1人の人間に変えられた
2022年9月15日、イーサリアムは「The Merge(マージ)」と呼ばれる歴史的な移行を完了しました。プルーフ・オブ・ワーク(PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(PoS)へ。採掘によるセキュリティ確保から、資産のロックアップによる承認方式へ。プロトコルの根幹が変わったのです。
この移行を主導したのは、ビタリク・ブテリン——イーサリアムの創設者です。彼とイーサリアム財団が方向性を示し、開発者コミュニティがそれに従った。反対意見も存在しましたが、最終的には創設者の意志が通った。
ETHを保有していた人の多くは、自分が保有している資産の性質が変わったことを、止める手段なく受け入れるしかなかった。
「誰かがいる」ということの意味
ここで重要な問いが生まれます。
誰かがいるということは、誰かが変えられるということです。
創設者がいる。財団がある。中心となる開発者がいる。そうした「人」が存在する限り、プロトコルは変更の対象になりえます。The Mergeはその実例です。ETHというネットワークは、善意であれ悪意であれ、特定の人間の決断によって根本から変わった。
アルトコインと呼ばれる暗号資産の大半は、似たような構造を持っています。創設チームがいて、財団があり、ロードマップがあり、トークンの分配も管理されている。それは「プロジェクト」です。プロジェクトは変更できます。方針を変えられ、設計を修正でき、場合によっては停止も可能です。これはプロトコルではなく、製品です。
サトシが消えた日に、BTCは完成した
ビットコインの話をしましょう。
サトシ・ナカモトは2009年にビットコインを公開し、2010年を最後に公開の場から姿を消しました。メッセージへの返信も、コードへのコミットも止まった。それ以来15年以上、誰もサトシと連絡が取れていない。
この「消えた」という事実が、BTCの最大の強みになりました。
2100万枚の発行上限を変えたい人間が現れたとします。プルーフ・オブ・ワークをPoSに切り替えたいと主張する開発者が現れたとします。しかし、誰がそれを決定できるのか?変更を「承認」できる創設者も、従わなければならない財団もない。
BTCの不変性は、設計が完璧だから成立しているわけではありません。「変えられる人間が、世界に誰もいない」という構造的な理由から生まれています。
これは逆説的に聞こえるかもしれません。弱さのように見える「誰もいない」という状態が、実は最大の強みになっている。
変えようとした者たちが証明したこと
2017年、大手取引所・マイナー・企業連合がBTCのブロックサイズを拡大しようとしました。「SegWit2x」と呼ばれたこの提案は、当初は広い支持を集めていた。しかし最終的に失敗しました。
理由は単純です。BTCには「これを承認する権限を持つ人間」が存在しないからです。マイナーも企業も、ノードを動かすユーザーの総意に反する変更を強制できなかった。
試みが失敗したこと自体が、BTCの不変性を証明しました。誰かが変えようとした、しかし変えられなかった——この事実こそが、BTCのプロトコルが本物であることの証拠です。
不変なプロトコルを、自分が使えるようにしておく
BTCのプロトコルは変えられない。しかし、あなたがBTCにアクセスする方法は別の話です。
取引所にBTCを預けている場合、そのBTCへのアクセスは取引所を通じてのみ可能です。取引所が出金を止めれば、あなたはビットコインを動かせなくなる。取引所がハッキングされれば、資産を失う可能性がある。取引所が経営難になれば、回収までに数ヶ月から数年かかることもある。
マウントゴックスの顧客が全額の弁済を受け始めたのは、2014年の事件から10年以上が経過した2024年のことです。分別管理義務があっても、実際にアクセスできるまでの時間を誰も保証できません。
プロトコルの不変性と、あなたのアクセス権の安全性は、まったく別の問題です。
秘密鍵を持つ者だけが、不変性の恩恵を受けられる
BTCの不変性を本当に享受できるのは、自分の秘密鍵を自分で管理している人だけです。
ハードウェアウォレットを使い、シードフレーズを自分で保管し、送金時には自分で署名する。この状態であれば、取引所が倒産しても、規制当局が出金を止めても、あなたのBTCへのアクセス権は誰にも奪われない。
サトシがいなくなったことで、プロトコルを変える人間が消えた。あなたが秘密鍵を持つことで、あなたのBTCを止める人間が消える。この2つの「誰もいない」が重なったとき、ビットコインの設計思想は完成します。
取引所のアカウントを確認してみてください。あなたの残高として表示されているBTCを、今すぐ自分のウォレットに移動できますか?もし迷いがあるなら、まずハードウェアウォレットの準備から始めることをお勧めします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
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