BTC4倍でも1万6千ドル精算|取引所破綻が価格上昇を奪う仕組み

2024年、ビットコインが再び高値圏に入ったとき、FTXの元顧客たちは複雑な思いを抱えていた。

FTXが米国連邦破産法(Chapter 11)を申請したのは2022年11月11日のことだ。その日のビットコイン価格はおよそ1万6000ドル。それから約2年が経過し、返済が始まった2024年、BTCは6万ドルを超えるまでに上昇していた。

顧客が受け取ったのは、現物のビットコインではなかった。破産申請時点の価格を基準に算出されたドル建ての精算金だ。相場が4倍以上になっていても、精算額の基準は変わらなかった。

BTCが返ってきたのではなく、「1万6000ドル基準の評価額」が返ってきた。

なぜ現物ではなくドルで精算されたのか

FTXの問題の根本は、顧客資産の横流しにある。

FTX創業者のサム・バンクマン=フリードは、系列ファンドのアラメダ・リサーチを通じて顧客資産を流用していた。本来であれば分別管理されるべき顧客のビットコインは、自社資産と混在していた。

この状態で破産が申請されると、顧客は債権者として手続きに参加することになる。米国の連邦破産法上、精算の評価基準は申請時点の価格だ。取引所が破綻した日の価格が、顧客の受け取り額を決める。その後にBTCがどれだけ上がっても、計算式は変わらない。

1BTCを預けていた顧客は、2024年に精算を受けたとき、1万6000ドル相当を受け取った。同じタイミングで現物のBTCを持っていれば6万ドル以上になっていた。その差額、約4万4000ドルは戻らない。

「分別管理があるから大丈夫」への答え

日本の資金決済法は、取引所に対して顧客資産の分別管理を義務付けている。FTXのように顧客資産を流用することは、法律上許されない。この点は明確に異なる。

しかし、分別管理義務があることと、必要なときにビットコインを引き出せることは、同義ではない。

2024年に起きたDMM Bitcoin事件がその証明だ。約482億円相当のビットコインが流出し、同社は出金を最大6ヶ月停止した。法的な管理関係がどこにあろうと、顧客は半年間、自分のビットコインを動かすことができなかった。

問題は法律上の権利の帰属ではなく、「必要なときに動かせるか」という実質的な管理権にある。取引所の経営危機・システム障害・規制当局の介入、どれが起きても出金が止まりうる。そしてその間にビットコインの価格が動けば、実質的な損失が発生する。

精算のタイミングは誰が決めるか

セルフカストディとの最大の違いはここにある。

自分の秘密鍵でビットコインを管理している限り、引き出すタイミングは自分が決める。価格が思い通りのところに来たとき、すぐに動かせる。取引所の都合に合わせる必要はない。

一方で、取引所に預けたビットコインは、取引所の状況に依存する。出金が停止されたとき、その間の価格変動のリスクは自分が負う。精算が行われるとき、その基準価格を決めるのも取引所や法的手続きだ。

FTXの元顧客が経験したのは、まさにこの「タイミングを奪われた」状態だ。相場が4倍になっている現実を見ながら、2022年の価格基準で精算を受け取った。現物保有との差はそのまま機会損失になった。

長期保有者ほど、セルフカストディが重要になる

ビットコインを数年単位で保有するつもりなら、この問題はより深刻だ。

10年後にBTCが現在の10倍になっていたとして、そのとき取引所が正常に稼働していて、スムーズに引き出せる保証はない。規制環境が変わることも、取引所の経営状況が変わることも、十分ありうる。

長期保有の利益を最終的に受け取るには、その時点でビットコインを引き出せる必要がある。そのためには、取引所への依存を減らすことが不可欠だ。

ハードウォレットへの移送は、難しい手順ではない。取引所に全額を置き続けることのリスクを考えれば、始めないことのほうが大きなコストになりうる。全額でなくてもいい。「失いたくない」と感じる分から動かすことが、最初の一歩になる。

FTXが教えたことは単純だ。取引所に預けたビットコインは、取引所が正常なときしか自分のものとして動かせない。価格上昇の恩恵を確実に受け取るために、今日の段階で秘密鍵を自分の手に持つことを検討してほしい。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

この記事が参考になったら、セルフカストディの具体的な始め方もチェックしてみてください。

LINE登録でセルフカストディの始め方を学ぶ 正しい手順を無料でお届けします
← 記事一覧に戻る
LINE登録 ▶ セルフカストディの始め方を無料で学ぶ