ArkがLayer2を変える|秘密鍵なき者は技術革命に乗れない
取引所に預けたビットコインを、そのまま保有している人に確認しておきたいことがある。チャネルファクトリーという技術を聞いたことはあるか。あるいは、2023年に登場したArkを知っているか。
どちらもライトニングネットワークの課題を解決するために設計されたLayer2技術だ。ビットコインのエコシステムで着実に存在感を増しており、決済の在り方を変えようとしている。そしてこれらの技術が広まるとき、取引所に預けたBTCは完全に蚊帳の外に置かれる。
ライトニングが抱えてきた「受信の壁」
ライトニングネットワークはビットコインの送金速度と手数料を大幅に改善した。数秒で決済が完了し、手数料はほぼ無視できる水準だ。理論上は申し分ない。
ただ、使い続けるには障壁がある。チャネルを開くたびにオンチェーントランザクションが発生し、手数料がかかる。さらに問題なのが受信の仕組みだ。ビットコインを受け取るには、相手から事前にチャネルを開いてもらうか、自分でインバウンド流動性を確保しておく必要がある。「受け取る」という行為そのものにコストと準備が伴う。これがライトニングの普及を妨げてきた本質的な問題だった。
チャネルファクトリー:45回のトランザクションを1回に圧縮
2018年に提案されたチャネルファクトリーは、チャネル開設のコスト問題に正面から取り組んだ設計だ。
10人のユーザーが個別にライトニングチャネルを開こうとすると、通常は45回のオンチェーントランザクションが必要になる。チャネルファクトリーを使えば、これを1回のトランザクションに圧縮できる。
この削減幅は大きい。ビットコインのブロックスペースは有限で、需要が集中すれば1回の送金に数千円の手数料がかかることもある。チャネル開設を束ねられるなら、ユーザーあたりのコストは劇的に下がる。ただし、この技術にも課題が残っていた。チャネル内で資金を動かす際に参加者全員がオンライン状態を維持する必要があり、実運用では扱いにくい場面があった。
Ark:受信時のオンライン待機を不要にした設計
2023年に発表されたArkは、チャネルファクトリーの思想をさらに推し進めた。
最大の特徴は、受信時に受信者がオンラインである必要がない点だ。ライトニングでは、送金を受け取るためにウォレットを起動して待機していなければならない。スマートフォンのバッテリーが切れていたり、電波の届かない場所にいたりすれば、その間は受け取ることができない。
ArkはArk Service Provider(ASP)という仲介レイヤーでこの問題を解決する。ASPがユーザーの代わりに資金を一時的に保管し、ユーザーがオフラインの間でも送金を受け付けられる状態にする。重要なのは、ASPはその資金を自由に動かせないことだ。設計として、ユーザーの同意なく資金を移動させることが不可能になっている。外見はカストディに似ているが、資金の制御権はユーザー側に残る。ArkとライトニングはLayer2の競合ではなく補完関係にあり、ビットコインの決済エコシステムをさらに広げる可能性を持っている。
秘密鍵がなければ、技術の進化は届かない
ここで核心の問題がある。チャネルファクトリーもArkも、秘密鍵を自分で管理するユーザーだけが使える技術だ。
取引所に預けたビットコインには、ユーザー自身が操作できる秘密鍵がない。秘密鍵は取引所が保有しており、ユーザーはブロックチェーン上のBTCを直接動かす権限を持たない状態にある。
取引所がLayer2機能を「サービス」として提供する可能性はある。だがその場合も、チャネルを開くのは取引所であり、手数料最適化の判断も取引所がする。ArkのASPを誰にするかも、取引所が決める。ユーザーは選べないし、変更もできない。自分のBTCのはずなのに、技術をどう使うかの判断は他者に委ねたままだ。
新しい技術が登場するたびに、秘密鍵を持つユーザーはすぐに動ける。取引所に預けたままのユーザーは、取引所が対応を決めるまで待つしかない。そして取引所が重い腰を上げるころには、また次の技術が世に出ている。Layer2の進化に乗り続けるための条件は、最初から自分で鍵を持っていることだ。
鍵を取り戻すことが、次の革新への準備になる
ビットコインの技術開発は止まらない。ライトニングが生まれ、チャネルファクトリーが提案され、Arkが設計された。この進化の流れは今後も続く。
その恩恵を受けられるかどうかを分けるのは、秘密鍵を自分で管理しているかどうかだ。取引所の口座に残高があっても、技術革新を「自分のBTCで」体験できる立場には立てない。
まだハードウォレットを持っていないなら、まず一台用意するところから始めてほしい。次の技術が来たとき、それを使える側に立つための準備は、秘密鍵を自分の手に取り戻すことから始まる。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
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