預金者が静かに貧しくなる仕組み|日銀11年の増刷と出口戦略
銀行口座の残高は変わっていないのに、生活が苦しくなっている。そんな感覚を持ったことはないでしょうか。気のせいではありません。数字は変わっていなくても、その1万円で買えるものは確実に減っています。
18世紀に発見された「お金の順番」の法則
18世紀、アイルランド生まれの経済学者リシャール・カンティヨンは、新しいお金が経済に流れ込む際の「順番」に着目しました。新しく発行されたお金は、最初に受け取る人にこそ最大の恩恵をもたらし、最後に受け取る人には物価上昇というコストだけが残る。これが後に「カンティヨン効果」と呼ばれる観察です。
「最初に受け取る人」は誰か。中央銀行から直接お金を受け取る金融機関や政府です。彼らはまだ物価が上がっていない段階で、新しいお金を使って資産を購入できます。株式、不動産、債券——価格が上昇する前に手に入れる側になれる。
「最後に受け取る人」は誰か。それが、銀行口座にお金を入れておくだけの一般の預金者です。
日本で実証された11年間
日本銀行は2013年、いわゆる「異次元金融緩和」を開始しました。国債を大量に買い入れることで市場にお金を供給し続け、2024年までの約11年間で日銀のバランスシートはおよそ5倍に拡大しています。
この間、日本市場では何が起きたか。日経平均株価は2013年から2024年にかけておよそ4倍以上に上昇し、東京都心の不動産価格も大幅に値上がりしました。「資産価格の上昇」という恩恵は確かに起きています。
しかし、その恩恵を受けたのは誰だったでしょうか。株式や不動産を持っていた人たちです。最初にお金が流れ込んだ市場で、すでに資産を保有していた層が資産価格の上昇という形で恩恵を受けた。これは偶然ではなく、「お金の順番」の構造そのものです。
預金者に残されたコスト
一方で、預金だけを持っていた人の11年間はどうだったか。銀行の定期預金金利はほぼゼロが続きました。しかし同じ期間、円安の進行と輸入物価の上昇が続きました。食料品、エネルギー、日用品の価格は上がり続けた。
残高は変わっていない。でも、その1万円で買えるものは減っている。これが「最後に受け取る人」に残されたコストです。
重要なのは、この構造は誰かの悪意の産物ではないという点です。金融政策には景気下支えや雇用維持といった目的があります。しかし結果として、お金を「持っている場所」の違いが、受け取れる恩恵の違いを生む。それが11年間にわたって日本で静かに起きていた現実です。
増刷できない設計
ビットコインには、この問題に対する根本的な答えが組み込まれています。発行上限は2100万枚。この数字は、誰かが「増やそう」と決めたところで変えられません。プロトコルに数学的に埋め込まれており、日銀でも、各国政府でも、ビットコインの創設者でさえも変更することができません。
サトシ・ナカモトが2009年にビットコインを設計した背景には、2008年の金融危機があります。最初に生成されたジェネシスブロックには、英国の銀行救済を報じる新聞の見出しが刻まれています。「増刷によって損をする人を生み出す仕組み」への明確な問題意識から、ビットコインは設計されました。
秘密鍵を持つ意味
ただし、ビットコインを「持っている」ことと、秘密鍵を「自分で管理している」ことは別です。取引所の口座にビットコインを置いている場合、秘密鍵は取引所が管理しています。
これは何を意味するか。取引所に何らかの問題——システム障害、経営破綻、出金制限——が発生した際、自分のビットコインを引き出せなくなるリスクがあります。マウントゴックスでは最終的に引き出せなくなるまで何年もかかりました。DMM Bitcoinでは482億円相当の不正流出後、出金停止が6ヶ月以上続きました。
2100万枚の上限が保証するのは「増刷されない」という性質です。しかし、その恩恵を確実に受け取るためには、秘密鍵を自分で管理するセルフカストディが必要です。取引所に預けている限り、アクセス権は自分ではなく取引所が持っています。
「お金の順番」から外れる選択
18世紀に観察された法則は、今も動いています。新しいお金は最初に金融機関や政府に届き、最後に一般の預金者に届く。その頃には、物価上昇というコストが先に届いている。
この構造から外れる選択肢は、発行上限が数学で固定されている資産を、自分の手で管理することです。ハードウォレットを用いてセルフカストディを始めることは、難しいことではありません。まず1台のハードウォレットを購入し、シードフレーズを安全な場所に保管する。それだけで、あなたのビットコインへのアクセス権は完全に自分のものになります。
お金が刷られるたびに「最後に届く側」に留まり続けるか。それとも、増刷が届かない設計のもとに移るか。その選択は、今すぐできます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
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